記事一覧

【高校数学】アクティブ・ラーニングの問題点(2017年2月)

こんにちは。こんばんは。


※※※
2017年2月14日に,次のような報道がありました。
---
文部科学省が公表した学習指導要領改定案では、中央教育審議会の答申がキーワードの一つとして掲げていた「アクティブ・ラーニング」という言葉は使われていない。同省は「指導要領は広い意味での法令であり、しっかりした定義のない片仮名語はなかなか使えない」と説明している。
改定案では、答申がアクティブ・ラーニングの説明に使った「主体的・対話的で深い学び」という表現になった。
---
当記事の「アクティブ・ラーニング」も,「主体的・対話的で深い学び」のことです。
※※※


「アクティブ・ラーニングはグループワーク,調べ学習などの『方法』のことではない。」
と,よく言われます。
では,アクティブ・ラーニングとは何か?


それは,
「生徒がアクティブに学習すること」
です!


つまり,私なりに解釈すると,
「アクティブ・ラーニングを導入するけど,その方法は各自で考えてください。」
という状況だと認識しております。


スケジュール的には
2020年:小学校,2021年:中学校,2022年:高校
の指導要領改訂から随時実施していくことになっています。


「なぜ,具体的な方法を議論しないんだ!?」
と思いますよね^^;
これには理由があります。


方法をいろいろ議論してある程度決まったとします。
で,その方法に当てはめた授業がアクティブ・ラーニングということにしてしまうと,実際の学習効果が上がらないという懸念があるからです。
つまり,その方法(スポーツのようなルールのある競技をイメージするとよいかもしれません)の授業でよい成績を上げた生徒が,本当の学力を身に付けたと言えるのかどうかという懸念です。


このような事情から
「方法の定まらないアクティブ・ラーニングだが,導入することだけは決まっている。」
という不可解な状況が,2017年2月現在です。


crossroads-1580168_640.jpg


なぜ対話が必要か?




講義型授業とアクティブ・ラーニングでは,アウトプットの機会が異なります。
講義型授業では,基本的に発言などのアウトプットはかなり少なく,テストに解答することが主なアウトプットになります。
一方,アクティブ・ラーニングでは,毎回の授業での発言などのアウトプットをする機会が増えます。


インプットの仕方も大きく異なります。
講義型授業では,先生のペースで授業が進み,インプットは受け手側(生徒)の集中力次第です。
一方,アクティブ・ラーニングでは,アウトプットをする必要があるのでインプットは半強制的に行う必要があります。
何も情報がない状態では,アウトプットできませんよね^^;


アクティブ・ラーニングで理解が深まるということは,つまり対話をするためにはある程度理解している,または理解しようとする態度が必要だからです。
このようないい面があるから,取り入れようということになりました。


上述で,あえてアクティブ・ラーニングでのインプットは「半強制的」と書きました。
実際,対話によるインプットは相手から情報が直接入ってきます。
逆に,講義によるインプットは,先生の言ったこと・教科書に書いてあることを自分なりに解釈して取り入れるので間接的といえます。


対話によるインプットは「強い」,講義によるインプットは「弱い」とも言えます。
講義では聞いているフリが可能ですが,対話で聞いているフリをしていることがバレると怒られますよね^^;


対話は強いインプットなので,深い理解が得られると同時に,意見の食い違いによる衝突が起こる可能性もあります。
講義は弱いインプットなので,自分から積極的にインプットしないと深い理解は得られないが,摩擦が起こることはありません。
アクティブ・ラーニングを導入するにあたり,最も大きな問題点はココなのではないかと思う今日この頃です。


別の視点から,「対話が苦手な人はダメなのか?」という疑問もわいてきます。
対話には衝突する可能性もあり,気心の知れた人以外とは苦手という人も多くいます。
そういう人たちは,アクティブ・ラーニングにおける成績は低くなってしまうかもしれませんが,それでいいのか?という疑問も当然わいてきますね。


アクティブ・ラーニングでは,「評価をどうするか?」というのも大きな問題点なので,これは後述します。


対話はしないけどアウトプットの機会は増やす,という方向は考えられます。
その場合,アウトプットしている本人はアクティブだが周りの人は受け身,という新たな問題も発生します。


『受け身の講義型授業は改善すべき』というのは,当然そうすべきだと思うほど説得力があります。
が,実際に改善しようするといろいろと問題点が浮かび上がってきます。
みんなでじっくりと考えていきましょう!




大学入試に必要か?




これは少し先の話になりますが,対話によるアクティブ・ラーニングを行ったクラスと行わなかったクラスで進学実績が変わらなかった場合,アクティブ・ラーニングは下火になるでしょう。
そうならないように,大学入試改革が行われる予定です。
改革を行う側は,試験の中身によって,どの程度改革を行うつもりがあるのかが問われることになるでしょう。


様子見の期間があると思いますが,それを経て定着するのか下火になるのかがはっきりとしてくるでしょう。
『受け身の授業は改善すべき』という問題提起とともに,AI(人工知能)の台頭による知識の詰め込みの価値が下がることも,対話への移行に関係します。
文科省が改革をけん引していますが,社会全体で考えるべき問題です。


よく似た事例で,デジタル機器を使った場合と使わなかった場合で,理解度に変化がある教科とない教科があるそうです。
数学は,図形やグラフを見る機会が増えると理解度が増すのだそうです。
もちろん,デジタル機器を使った授業に慣れてくると,理解度も増してくるということはあるでしょうね。


現在は,デジタル機器を使わないことで理解が致命的に遅れる,,,というほどのことでもないので,普及がそんなに進んでいません。
費用負担の面も大きいので,取り入れることに慎重になるのは当然です。
「いずれはペンとノートからデジタル機器に移行するだろうけど,まだいいかな。」といったところでしょうか。


話が逸れましたが,メリットがあるかないかが下火になるかどうかに大きくかかわってくると思います。
そういった意味で,大学入試に必要かどうかは大きな問題点だと言えそうです。




評価をどうするか?




上述した問題です。ここで改めて考えてみます。


講義型授業では,提出課題と定期テストで評価される場合が多いでしょう。
アクティブ・ラーニングでは,授業中の姿勢も評価する場合と,テストの結果のみを評価する場合があります。


授業中の姿勢も評価すると,アクティブ・ラーニングが活発になる効果があるかもしれませんが,対話が苦手な人にとっては辛い評価となります。
そこで,テストの結果のみを評価することにすると,授業に積極的に参加しない雰囲気になるかもしれません。


やはり,極端な評価基準にするのではなく,公平感のある評価基準になるように調整することが大事だと思います。
これも「こうすれば正解」ということが一概には言えないため,解決が難しい問題点と言えそうです。




本質のみの学習でよいか?




これはどういうことかというと,次期学習指導要領では主体的・協働的な学習としてアクティブ・ラーニングの導入が予定されています。
そのため,学習項目が少しは減るのかというとそんなことはなく,現行並みの分量を学修する必要があります。
普通に進めていてはどうやっても時間が足りないため,学習項目の中でも本質部分に絞ってアクティブ・ラーニングの時間を確保することが現実的です。


数学における本質のみの学習とは,次のような感じです。
わかりやすくするために足し算で説明すると,
3+2=5,8+3=11 ……①
という足し算を習ったとします。これを少し応用して,
3+□=5,8+□=11 ……②
の□に何が入るか?という問題も考えることができますね。逆の視点を考える良問です。


本質のみの学習というのは,学校では①のみ授業して,②は授業では扱わないということです。
①を学習して,自然に②も理解できる生徒さんもいるかもしれませんが,クラス全体,学校全体,日本全体でどのような影響が出るのかは未知数です。


「本質のみを学習すればよい。」というのは,知識偏重からの脱却の場面でも聞かれる言葉です。
確かに細かい知識をたくさん覚えることは,入試には役立つかもしれませんが実生活ではあまり役に立たないという実感があります。
かといって,本質のみとはどこまでのことなのかというのも,線引きが難しい問題です。


高校数学では,新しい定理・性質を習うと,すでに学習した定理と組み合わせて解く問題が多くあります。
大学入試が実施されるなかでいろいろなパターンの多くの良問が誕生しました。
このような問題を解くためには,いろいろ組み合わせる力が必要となり,多くの問題を解くことでその力は付いてきます。
これは,本質のみの学習では付きにくい力ですが,高校数学を通して付けておきたい大事な力です。


少し工夫が必要な問題を考える時間を削った影響がどう出るか,読めない部分があります。
とにかく知識を詰め込んだ方が有利になるという入試は改革する必要がありそうですが。。。


個人的には,現在の大学入試で出題される数学の問題は完成度が高く,なるべくこの水準を維持した方がよいのではないかと考えております。
現在の授業方法で,しっかりとした実力をつけることができている先生は,特に何も変えなくてもよいのではないかと思っています。


一方で,残念ながら数学が大嫌いな生徒さんが多いorz
という事実もあるので,例えば一方通行の講義型授業に生徒たちが教え合って学習する時間も入れることで,数学嫌いが少しは解消できるかもしれません。


話が逸れましたが,時間を確保するために本質以外を削除するということは慎重に行った方がよいのではないかということを書きました。
受け身の授業は改善した方がよいとは思いますが,大学入試に出題される数学の問題レベルは現在の水準を維持した方がよいという相反する考えのため,うまい解決策が見いだせない状況です。




問題点を提示するばかりの記事でしたが,ご意見・ご感想などあればコメントにてお願いしますm(_ _)m
問題の根っことなっている部分は,「社会ではどんな力が必要で,学校ではどんな力をつける必要があるか?」
ということを,社会全体で考えることだと思います。


まずは,国際的な調査で生徒さんの学習に対する意欲・関心が減ってきているということが判明しているので,これに対する解決策を考える必要があります。
さらに,各教科(当ブログでは高校数学)に落とし込んで考えていきましょう~


それでは~


記事のタイトルとURL をコピーする!

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

うき

Author:うき
数学好きの会社員です。

サイトのプロフィールはこちら

ブログで「数学は楽しい」,「数学は役に立つ」といった記事を更新しています。
数学が「苦手・嫌い」な人が,
「好き」になることをお手伝い!

ホームページ
「【高校数学】例題&問題集」
にて,教科書レベルの教材を無料公開しています。
現在の網羅率:数学Ⅰ-100%
       数学A-100%
       数学Ⅱ-66%
       数学B-100%
       数学Ⅲ-0%

こちらの記事で,高校数学関連サイトを紹介しています。
関連記事・・・【一目瞭然】高校数学関連サイトを一挙に紹介!


当サイトはリンクフリーです。
また,引用元を明記していただければ,記事の部分的な引用も自由にしてください!

当サイトでも公開されている記事についてリンクを張らせていただいたり,引用元を明記して記事を部分的に引用させていただくことがあります。
ご連絡いただければ,リンクや引用は削除いたします。



follow us in feedly

Amazon.co.jpアソシエイト


書評はこちら

いつも中途半端になってしまう人向けです。 ガンバリが足りないのではなく,しなくてもいいことをしているのでは? 本当にやりたいことがみつかる1冊です。


関連記事はこちら

数学の問題の解法が教えたいのではなく,しっかりと本質を理解させたい人向けの1冊。